ラブ・ライフハック

二人で豊かで自由なラブラブ人生を送るための試行錯誤の記録、雑多な日記

【ハルの読書日記】奇巌城アルセーヌ・ルパン/モーリス・ルプラン 菊池寛 訳

奇巌城アルセーヌ・ルパン/モーリス・ルプラン
菊池寛 訳 を読んだ。

きっかけは、もちろんかの『ルパン三世』。
彼の鮮やかで軽やかで強かで、男としてはほとほと呆れるくらいどうしようもないところが、私はほんとうに好き。

表題の作品のまえに、『探偵小説 アルセーヌ・ルパン/モーリス・ルブラン 婦人文化研究会 訳』というのも読んだけれど、はっきり言っていまひとつだった。
短くて読みやすいのだけれど、その世界に浸るまえに完結してしまうようなあっけのなさが、物足りなかった。

この奇巌城という作品は、しかし違って面白かったので、日記につけておこうと思う。
私とおなじ動機でアルセーヌ・ルパンに興味を持った人があれば、本の厚さに怯まず、ぜひこちらを手にとってほしい。

この作品の素晴らしい要素を三つ挙げる。

一つ目は、紳士怪盗アルセーヌ・ルパンが、『見事』だったこと。

当たり前のようだけれど、この「見事!」という驚嘆なくして、ルパンと名のつく作品を拝むことは、私にはできない。
そしてまた、ルパンと名のつく時点で、ハードルが格段に上がってしまっている。
序盤こそ、そのハードルを越えてくれるかどうか気をもんだけれど、後にそんな恥ずべき考えを自分でたしなめるほどには、飄々と越えてくれたのでとてもよかった。

二つ目は、極めて聡明で、見た目も中身も美しい少年という、チャーミングな敵役の存在。

彼の笑顔には思わず「かわいい!」と口にし、その涙にはまったく心を揺さぶられるのだ、あのルパンが。
少年の初々しさ、好奇心、機知と勇気と純潔さは、いっそ神々しい。
そんな相手をまえにしてなお、アルセーヌ・ルパンの紳士さというものが際立っている。

三つ目は、惚れた女への熱意。

ほほう、と思うほど、一人の女性にお熱なのだ。
彼が宣言をしたら必ずや盗み去っていくものは、
宝玉、それから愛した女の心である。
すると途端に、また彼の魅力が広がり、色香が漂う。

これらの基盤の上で、機知と機知とがぶつかり合っていく。
これを体感することは、推理、というよりも、冒険、という感覚に近かった。
月のない暗い夜を待つことや、真蒼な大空、緑色の渺々たる大海、暖かい日の光を浴びて、輝く景色の中を歩くことは。

爽やかで満足な読後感。
この目で、眩しいほどの宝石の山を見、揺れる海を見、森の清潔な空気や、洞窟の冷たさをこの肌で感じたような。

そしてさらに、この清々しさで終われると思ったら
大間違いなところも、また醍醐味なのだった。